鬼平犯科帳(十四)
鬼平犯科帳が、時代を超えて現代人の心を強く捉えるのは、部下を束ねる平蔵の“リーダーシップの見事さ”にある。
部下を思いやる心の篤さ、だからこそ部下も我を忘れて働く……名管理職・平蔵の真骨頂を描く「五月闇」のほか、お頭へ盗賊を周旋する口合人(くちあいにん)と平蔵のかけひきが愉快な「殿さま栄五郎」、兎忠こと木村忠吾が久しぶりに活躍する「さむらい松五郎」、そのほか「あごひげ三十両」「尻毛の長右衛門」「浮世の顔」の全六篇を収録。
二夜続けて、腕利きの同心が殺害された。
その剣の手練は、半年まえ平蔵を襲った兇刃に似ている。
何者かの火盗改方への挑戦だが、その目的は? あの大鴉のような男が向けてきた刃の凄さを思い返した長谷川平蔵は、湧き上ってくる闘志を押さえかねて身震いした――正体不明の恐るべき強敵の登場に、じりじりと追い詰められる平蔵。
亡き恩師・高杉銀平の言葉が思い出せれば、手がかりになるのだが……シリーズ初登場の長篇〈雲竜剣〉は、興趣満々の作品。
出合茶屋で女賊の裸身をむさぼる同心・黒沢。
どうも妙だ、と同僚の小柳は気づいた――「網虫のお吉」。
結婚を目前に最後の悪所通い、としゃれこんだ木村忠吾が出くわしたのは――「影法師」。
妻を寝とられ腹いせに放火を企てた船頭が、闇の中、商家へ吸い込まれてゆく黒い影の群れを見た時――「火つけ船頭」。
巷にしぶとく生きる悪に鬼平は如何に立ち向かうのか? 「白根の万左衛門」「見張りの糸」「霜夜」とあわせ全六篇を収録。
その居酒屋には名前さえついていない。
うまい酒を出すが、亭主がたいそう無愛想なその店を、土地の人びとは「権兵衛酒屋」と呼んでいる。
その身のこなし、もと二本差であったらしい。
興味をひかれた長谷川平蔵は「権兵衛」に立ち寄り、評判の酒を堪能することに。
しかし、直後、店の女房は斬られ、亭主はいずこかへ逐電した。
捜査をはじめた平蔵に迫る怪しい影は、ついに鬼平を斬った! 武家社会の闇と悲哀が浮かび上がる特別長篇〈鬼火〉、満を持して登場。
大恩ある盗賊の娘が狙われている。
密偵仁三郎は平蔵に内緒で非常手段をとる。
盗賊上りの部下を思いやる長官の情と密偵の苦悩を描く「一寸の虫」。
尾行中の鬼平の前で提灯が闇に飛んだ。
辻斬りか? 「神妙にせよ!」、途端に逃げ失せた賊と共に傷ついた男も消える。
謎が謎を呼ぶ「蛇苺」。
盗賊改方の事務方・細川峯太郎が初の調査にのりだす「草雲雀」。
おとうと弟子を陥れる卑劣な事件に鬼平が苛烈な思いでのぞむ「おれの弟」。
ほか、円熟の短篇全六篇を収録!続きはこちらから⇒ttp://www.ebookjapan.jp/shop/book.asp?sku=60010644